会社と個人を元気にするキャリア・カウセリング
著者名 | 金井壽宏 編著/td> |
---|---|
タイトル | 会社と個人を元気にするキャリア・カウセリング |
出版社 | 日本経済新聞社 2003年8月 |
価格 | 1500円 税別 |
書評
キャリア・カウンセリングに対する関心が高まっている。ビジネスの世界で活躍しているひとは、人事部のひとも含め、カウセリングには必ずしも詳しくないことが多い。わたし自身は、学生のときには臨床心理学とカウセリング心理学を専攻したいと思っていた。それでも、この分野には知らないことが未だにいっぱいある。しかし、仕事を通じてのキャリア発達に興味をもってきたので、キャリアのデザインに戸惑う場合に、どのような支援が可能なのかという問題にはずっと深い興味を抱いてきた。もともとの関心と今の仕事がわたしのなかでも結びついてくるようになった。とはいえ、専門家の助けなしに、キャリア・カウンセリングという問題を解きほぐすことはできないと思った。
だから、この本では、すばらしい活動をしている臨床心理学者の専門家4名にご登壇いただいた。名古屋大学の金井篤子さんには、キャリアの節目に生じるストレスの問題について、広島大学の岡本裕子さんには、中年になっても続く仕事とひととの関係を通じて続くアイデンティティ形成の問題について、筑波大学の渡辺三枝子さんには、キャリア・カウンセラーという新しい専門職をめぐる諸問題について、さらに大阪大学の倉光修さんには、中年のころに鬱病になってしまうひとのゆとりの問題について、執筆していただいた。それぞれの個性の光る章が、この本をユニークなものにしてくれた。元は、ある雑誌の連載のつもりでスタートしたものが、このように本の形になってありがたく思っている。
もちろん、わたし自身も、キャリアのことが気になる時代と世代について、また、節目だけはデザインしたほうがいいというキャリア観、(倉光さんの主張とは逆のケースだが)とことん経営幹部にまで元気よく上り詰めることは単なる出世でなく発達だという見方について、書かせてもらっている。また、日本語で書かれたキャリア発達の論文として、これまでずっとベストのものだとわたしが敬意を払ってきた有名な南隆男論文もこの本に所収させていただいた。本格的にキャリアの研究をしようと思うひとに、この付録はありがたいプレゼントになっていることだろう。
ひとの問題を気にかけることが、個人の元気にも会社の元気にもプラスになることを、キャリア・カウンセリングの問題を素材にして提案しているのがこの本で、この問題を探求したいと思う読者に、いくつかの意味のある概念や理論、考え方が提示されていることと、他の著者たちともども希望したい。
目次
プロローグ
第1章 キャリアのことが気になる時代と世代
第2章 ストレスをスムーズに解決する
第3章 ミドルの「危機」
第4章 キャリア・カウンセラーを組織変革に活かす
第5章 うつ克服の道を求めて
第6章 リーダーシップ発揮は、キャリア発達の証のひとつ
終 章 キャリアを捉える視点
補論1 キャリア開発の課題
補論2 キャリア・トランジション論の展開
あとがき