流通・営業戦略 現代のマーケティング戦略(3)


著者名 南知惠子 小林哲 編著
タイトル 流通・営業戦略 現代のマーケティング戦略(3)
出版社 有斐閣 2004年3月
価格 1900円 税別

書評

本書は、有斐閣のテキストシリーズのうち、上級編として出版されたものであり、大学院生、ビジネスマンを読み手として想定している。本書の目的は、サプライチェーン・マネジメントやロジスティクス管理、営業における顧客インターフェイスの管理といった、企業間関係の中で起こる現象面での変化と管理問題を理論的に解説することにある。

従来の流通領域のテキストでは、メーカーから卸売業者、さらに小売業者までの営利流通経路のみを分析対象として扱ってきたが、近年では、実務上、メーカーとサプライヤーとの関係、さらに流通業者やメーカーとの最終消費者との関係にまで、流通に関する管理領域は拡張されていると言え、商流、物流、情報流の各面に変化が見られる。例えば、ロジスティクスは、調達物流と販売物流とを統合する概念であるが、自社企業のみならず、他企業との協働のもとに実現されるものであり、商品の所有権の移転と物の配送とは、効率上別の流れが形成される。こうした流通の変化は企業間の情報共有を前提として起こる。

本書では、こうした拡張されたチャネルにおける多様な企業の行動の相互関連を、情報駆動型リレーションシップ・マネジメントという視点から解明することを試みる。本書の内容は、下記の章立てに示すが、各章末には事例が示され、理解を助けるよう工夫されている。上級テキストとして、最新事例の理論的説明に紙幅が割かれているため、できれば同シリーズの基礎理論を解説したテキストと併読することをお勧めする。

目次

第1章 流通・営業戦略の新視点
 ――拡張チャネルにおける情報駆動型リレーションシップ・マネジメント

第2章 マーケティング・チャネルのマネジメント
 ――伝統的チャネル論の射程

第3章 消費者起点の戦略的情報フロー管理
 ――情報化がチャネル・マネジメントを進化させる

第4章 顧客インターフェイス
 ――そのデザインとマネジメント

第5章 営 業
 ――取引を中核とする多元的活動フロー管理

第6章 ロジスティクス
 ――ロジスティクスの役割と進化

第7章 販売部門と生産部門のリンケージ
 ――需要管理能力と機動生産力の構築

第8章 サプライヤー・マネジメント
 ――Win-Win関係による競争優位をめざして

第9章 顧客関係マネジメント
 ――情報通信技術をプラットフォームとする企業と消費者の新たな関係