コーポレート・ファイナンス入門


著者名 砂川伸幸
タイトル コーポレート・ファイナンス入門
出版社 日本経済新聞社 2004年9月
価格 830円 税別

書評

毎年、講義の最初の時間に「企業活動に必要な 3 つの要素は何ですか?」と質問します。たいてい、「ヒト・モノ・お金」という答えが返ってきます。次に、コストについて聞きます。「ヒトに支払うコストは人件費ですね。モノ(の仕入れ)に支払うコストは原材料費ですね。では、お金に支払うコストは何ですか?」

「お金に支払うコスト?」意地悪な質問かもしれません。「お金を調達するコスト」と言えば、もう少し分かりやすいでしょう。このお金のコストが、コーポレート・ファイナンスのキーワードです。資本コストといいます。

人件費や原材料費が払えないと、企業は活動を続けていくことができません。ヒトとモノが動かなくなります。同じように、資本コストが払えないと、お金が流れなくなり、企業活動はストップします。正常な企業は、人件費、原材料費、資本コストをきちんと支払い、ヒト・モノ・お金がスムーズに動きます。

コーポレート・ファイナンスは、企業活動における資金の流れについて考えます。スムーズな資金の流れを作り出すためには、資本コストを上回る成果をあげることが必要です。そのためには、資本コストを理解し、意識し、企業経営に取り入れることが大切です。このことを念頭において、『コーポレート・ファイナンス入門』 をお読みください。

この本は、タイトルの通り、コーポレート・ファイナンスの入門書です。コーポレート・ファイナンスを学ぼうとする人、あるいは学ぶ必要のある人が、第1冊目に読む本です。一度、コーポレート・ファイナンスを勉強した人は、短い時間でエッセンスと全体像を思い出すために利用してください。

本の構成は、次のようになっています。Ⅰ章では、皆さんをコーポレート・ファイナンスの世界に招待します。なぜコーポレート・ファイナンスを学ぶのか、コーポレート・ファイナンスで何を学ぶのか、について書いてあります。Ⅱ章では、コーポレート・ファイナンスのキーワードである資本コストについて学びます。資本コストについては、リスクとリターンの関係を含めて、かなり詳しく解説しました。Ⅲ章では、コーポレート・ファイナンスのもう 1 つのキーワードである現在価値について学びます。

資本コストと現在価値という 2 つのキーを手に入れると、あとは扉を開けていくだけです。Ⅳ章では、企業の投資行動という扉を開けます。ここで、コーポレート・ファイナンスが推奨する投資決定基準の NPV 法と出会います。最新のアプローチであるリアル・オプションも顔を出します。 V 章では、企業の資金調達という扉を開けます。待ち受けるのは、ノーベル経済学賞をとった MM の無関連命題という考え方です。その後、現実的な資金調達行動について、レクチャーを受けてください。Ⅵ章は、企業の利益還元と配当政策の部屋です。理論の小部屋と現実の小部屋を回ってください。最後に、次のステップに進む方のために、ブックガイドを用意しました。ご参照ください。

アマゾン・カスタマーレビューの紹介

レビュー 1 : USCPA の新試験、 Business Environment & Concepts の Financial Management のパートの補助教材に是非!大手予備校の教材や Wiley 等には欠けている繋がりが見えてきます。範囲は少し足りませんが、読みやすさと繋がりが見えやすいという点で、とても優れた本です。特にこの分野の初学者には読みやすいと思います。
レビュー 2:著者の前書きに学生が3日で読むことができたとあったが、1日で読むこともできると思われる。簡潔な説明の後に具体例があり、非常に理解しやすい。ですます調で書かれており、講義を直接受けているような感じである。この本で学ぶべき人にとっては題名からは内容を推測しにくいが資本コストと現在価値を中心にファイナンス理論について述べられている。

目次

[ Ⅰ ] コーポレート・ファイナンスへの招待

1 -コーポレート・ファイナンスとは
2 -コーポレート・ファイナンスの視点
3 -なぜコーポレート・ファイナンスを学ぶのか
4 -資本コストと資金の流れ

[ Ⅱ ] 基礎( 1 )リスク・リターン関係と資本コスト

1 -リスクとリターン
2 -企業の資本コスト
3 -資本コストを求める

[ Ⅲ ] 基礎( 2 )現在価値とキャッシュフロー

1 -コーポレート・ファイナンスと現在価値
2 -リスクがないキャッシュフローの現在価値
3 -リスクがあるキャッシュフローの現在価値
4 -企業価値とキャッシュフロー

[ Ⅳ ] 企業の投資行動はどう決まるか

1 -コーポレート・ファイナンスと企業の投資決定
2 -投資の価値は NPV
3 -プロジェクトを行うかどうか決定する
4 -プロジェクトに順位をつける
5 -リアル・オプション

[ Ⅴ ] 企業の資金調達

1 -企業の資金調達と投資行動
2 -資本構成と企業価値
3 -法人税とデフォルト・コスト
4 -資金調達の方法

[ Ⅵ ] 企業の利益還元と配当政策

1 -配当と株主価値
2 -現実的な諸要因と配当政策
3 -自社株買いと株主価値
4 -配当政策の動向
5 -まとめ

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