金融経済学ハンドブック1・2


著者名 George M. Constantinides Milton Harris Rene Stulz 編 加藤 英明 監訳 藤原 賢哉(第8章共訳) 忽那 憲治(第5章) 砂川 伸幸(第4章、7章)
タイトル 金融経済学ハンドブック1・2
出版社 丸善株式会社 2006年2月
価格 21000円 税別

書評

ファイナンス、あるいは、ファイナンシャルエコノミックスという学問領域が誕生してから、約半世紀が過ぎようとしている。その間にノーベル賞受賞者を幾人か輩出し、この50年間でもっともめざましい発展を遂げた領域のひとつといわれるまでになった。ファイナンスは、 1950年代に提案されたモダンポートフォリオ理論、ならびに、 MM理論を原点として、証券市場と証券価格を扱う証券投資論や資産価格理論と企業の財務の意志決定を扱うコーポレートファイナンスという大きな2つの流れの中で発展してきた。本書が2巻からなるのもうなずける話である。本書の日本語タイトルである金融経済学という言葉は日本ではなじみが薄いかもしれない。日本では、ファイナンスの一分野である金融工学が先行した形で紹介され、ファイナンスを代表するような印象がある。しかし、実際ファイナンスが扱う分野は本書をみてもらえば分かるが、金融工学だけではない。昨今、新聞紙上を賑わしているM&Aやコーポレートガバナンスは、ファイナンスの主要なトピックのひとつである。

本書のタイトルである金融経済学は、ファイナンシャルエコノミックスをそのまま日本語に直訳したものだが、この学問が経済学をその源流として発展してきたことを考えれば妥当な訳と考える。カタカナ表記であるファイナンスをそのまま使うことも考えたが、日本語訳ということで漢字表現の日本語を使うことにした。

本書は、日本語でハンドブックと呼ぶにはあまりにも内容が充実しており、本来はファイナンスの基礎とか、ファイナンスのフロンティアとかいったタイトルが適当な気がするくらい中身が濃い。全2巻、 20章からなる本書は、ファイナンスのすべての領域を網羅し、それぞれの領域において最も優れた研究者達によって、その領域におけるこれまでの発展と課題、研究の最先端が、丁寧かつ簡潔に要領よくまとめられている。このようなオールスターメンバーによるファイナンス研究の総括は、研究者にとっては、研究分野の最前線を知る上で格好の書であり、これから論文を書く大学院の学生にとっては、最も効率よく各分野の研究状況が分かるという意味で必読の書といっても過言ではないだろう。また、この分野に携わる実務家にとっても実務面への適用について貴重な手引き書となること間違いない。翻訳に当たったメンバーも、担当した章の領域において、中心的に研究を行ってきた研究者達であり、各章の翻訳担当者として適任者を選んだつもりである。 1巻はコーポレートファイナンスの問題を扱っており、 2巻は投資の問題(資産価格)を扱っている。各章はお互いに密接に繋がりあっているが、ひとつひとつの章は単独で読み切れるようになっている。

本書の中には、数式がたくさん出てくる章もいくつかあるので、その意味を考えながらじっくりと読んで頂きたいものだ。そして、学問を追究する上で年齢は致命的障害には成り得ないということ、致命的な障害は自分自身の心の中にあることを肝に銘じながら、本書を研究の道標として使って頂ければと思う。

目次

1巻コーポレートファイナンス
1章 コーポレートガバナンスと会社支配
2章 エージェンシー、情報、そして企業の投資
3章 企業の投資政策
4章 企業の資金調達
5章 投資銀行業と証券の発行
6章 金融における革新
7章 ペイアウト政策
8章 金融仲介機関
9章 マーケットマイクロストラクチャー

2巻金融市場と資産価格
10章 裁定、状態価格、ポートフォリオ理論
11章 異時点間の資産価格理論
12章 マルチファクターモデル、ボラティリティ境界、ポートフォリオパフォーマンスの検証
13章 消費型資産価格理論
14章 エクイティプレミアムの回顧
15章 アノマリーと市場効率性
16章 金融資産の価格付けは地域別に分断されているのか グローバルに統合されているのか?
17章 マイクロストラクチャーと資産評価
18章 行動ファイナンスサーベイ
19章 デリバティブ
20章 債券価格理論