ハーバード流キャリア・チェンジ術
著者名 | ハーミニア・イバーラ 著 金井壽宏 監修・解説 宮田貴子 訳 |
---|---|
タイトル | ハーバード流キャリア・チェンジ術 |
出版社 | 翔泳社 2003年5月 |
価格 | 2000円 税別 |
書評
本書は、長らくハーバード・ビジネス・スクール(HBS)にいた著者が、INSEAD(欧州経営大学院)にいる間にまとめたキャリアに関する新著です。経営学とは、儲けるのに役立つ学問で、経営者のためのものだと思っているひとが世の中にはおられて、経営学のなかでキャリアの研究がありますというと、驚かれることがかつてはありました。しかし、働く個人の側から見たよい会社の研究というのも当然にあり、そのトピックとたとえば、経営戦略などのマクロの問題を結びつけることが重要になってきつつあります。
ひとは、学校を出たあとも仕事の世界を通じて発達を続けていきます。ですから、キャリアに関連のある研究や、生涯発達の心理学者やライフコースの社会学者によってなされてきました。前者はひとの生涯にわたる発達の心理的問題、後者はひとの人生の行路(ライフコース)が埋め込まれている社会環境に注目してきました。しかし、大きく欠けてきたのは、どのような会社でどのような仕事をしているのかという仕事の世界の記述です。そこを解き明かすのにいちばん貢献すべきかが、経営学者のおこなうキャリア研究です。
著者は、HBSやINSEADという一流のビジネス・スクールにいて、経営学の最新の議論をふまえてキャリア論を展開しています。監修者のわたしも含め、キャリアの研究者は、節目で大きく深く内省し、大きな絵を描くことを強調しがちでした。しかし、著者は、大きな絵ばかりを強調すると、ひとはかえってひるんで最初の一歩を歩まなくなってしまうので、まず一歩を踏み出して小さな勝利を収めること、それを積み重ねることを強調します。アイデンティティというのは変わらないものだという心理学的な通念に対しても新しい視点を提供してくれます。
わが国で実際にキャリア・カウンセリングに携わっているひとには、ここは考えが違うという違和感が随所にあろうかと思います。しかし、その違和感からまたご自分の考えをさらに深めるのに役立ててほしいと思っています。監修者のわたし自身は、大きな絵(ビッグ・ピクチャー)を描くことと、その方向に向かいながら小さな勝利(スモール・ウィンズ)を蓄積することは、ともに大切だし両立可能だと思っています。
目次
本書を推薦する言葉
はじめに
第一章 新しい可能性を見つける
第一部 キャリア・チェンジ入門編
第二章 将来の自己像
第三章 新旧のアイデンティティーの間
第四章 大きな変化
第二部 キャリア・チェンジ実践編
第五章 さまざまなことを試みる
第六章 人間関係を変える
第七章 深く理解し納得する
第三部 キャリア・チェンジの型破りな戦略
第八章 自分自身になる