経営は十年にして成らず
著者名 | 三品和広 編著 |
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タイトル | 経営は十年にして成らず |
出版社 | 東洋経済新報社 2005年11月 |
価格 | 1800円 税別 |
書評
この本は、前著『戦略不全の論理』(東洋経済新報社、 2004 年)の続編として書きました。前の本が研究書という位置付けであったのに対して、今度の本は、企業で働く人たちや学生にも読みやすい一般書という位置付けです。ジャーナリストよりは誠実に、経営者の自著よりは探求的に。これを合い言葉に、学者ならではの奥行きのあるストーリーを、平易な日本語で語ることに努めました。
内容としては、戦略不全を克服したサラリーマン経営者の事例集です。利益率の長期低落傾向に歯止めをかけて、さらに反転を成し遂げた経営者が具体的に何をしたのか、どんな人なのか、そのあたりを掘り下げて書き記しました。
もちろん、単なる事例集では面白くありません。問題は、事例の積み重ねから、何が言えるのかで、そこで登場するのが、「経営は十年にして成らず」という命題です。サラリーマン経営者でも十分に良い経営は出来るのですが、良い経営をするためには、それなりの時間が必要です。期待任期が長ければ、企業の抱える本質的な問題にメスを入れようとする、そこにメスが入れば業績はトレンドを変える。どうも、そんな具合になっているということです。経営のスピードばかりが問われる今日このごろですが、本当に大事なのは、「十年の大計」ではないでしょうか。それを神戸から声を大にして叫ぶのが、この新刊です。
実は、『戦略不全の論理』は三つも賞を頂きました。これを「もっとやれ」というメッセージと受けとめて、今は「その先」の研究を進めています。特に任期が長くてもダメな経営者がダメな理由を解明しないと、ただ社長の任期を長くせよと主張するわけにもいきません。現実に対する処方箋を用意するという意味では、この続編が大きな鍵を握っています。
しかるに、研究室に籠もって研究にいそしむだけでは、実学の看板が泣いてしまいます。したがって、研究は研究として進める一方で、そこから生まれる主張を、命題として問うようにしていきたいと考えています。『経営は十年にして成らず』は、その命題シリーズの第一弾になります。これが有為な議論を刺激することになれば、本望です。
目次
序章 経営の超長期性
第一章 リコー:デジタル化時代を先取りした浜田広
第二章 花王:「中興の祖」丸田芳郎が推し進めた二つの改革
第三章 田辺製薬:「経済学者」が成し遂げた「脱常識」の新薬開発
第四章 キャノン:高収益を築いた三人の異色経営者
第五章 GE :ジャック・ウェルチを育んだ 100 年企業のヘリテッジ
終章 日本企業の構造改革案