戦略不全の因果


著者名 三品和広
タイトル 戦略不全の因果
出版社 東洋経済新報社 2007年12月
価格 3200円 税別

書評

この本は、2004年に出した『戦略不全の論理』に続くシリーズ第二弾です。前作は企業業績を経営者と結びつける論理を提示しましたが、今回は両者を取り持つ中間変数に光を当てました。その中間変数は経営者が採用する戦略で、より具体的に言えば、事業の立地が企業業績を決めるというストーリーになっています。

このような因果関係を主張する上で、今回も前作と同様にハード・データを重用しました。経営学と言うと、とかく簡便に実施できるインタビューやアンケートに基づくソフト・データが幅を利かせがちですが、それでは主観の要素が入り込む上に、全体を推し量る上で断片に頼ることを回避できません。この限界を打破すべく、私はハード・データ(法的な裏付けを持つ有価証券報告書)をとことん使うという手間のかかるアプローチを採用しています。

この本では、1980年以前に上場された1013社(金融業は除く)に、独自開発したモノサシを適用することにより戦略不全企業202社と、対照群企業 122社を選び出し、その分岐点がどこにあるのかを明らかにしたつもりです。実証の立場から戦略論に新たなチャプターを付け加える書として手に取っていただければ幸いです。

目次

序章:動機と展望
第一部:利益成長
第1章:経営戦略の評価尺度
第2章:母集団のふるいわけ
第3章:戦略不全企業の属性

第二部:事業立地
第4章:戦略の核心
第5章:成否と浮沈
第6章:転地の試練

第三部:経営体制
第7章:転地に成功した企業
第8章:立地に成功した企業
第9章:戦略不全を患う企業
終章:訓戒と指針