過剰管理の処方箋―自然にみんながやる気!になる

著者名 金井壽宏 岸良裕司
タイトル 過剰管理の処方箋―自然にみんながやる気!になる
出版社 かんき出版 2009年2月

書評

名古屋で品質管理の大きな大会にお邪魔したときに、初めて共著者の岸良氏にお会いしました。岸良氏は、お得意のCCPM(クリティカル・チェーン・プロジェクト・マネジメント)の話をされ、わたしはモティベーションの話をさせてもらいました。事務局の方々は、岸良氏がこられるといつもたいへんに熱心で、みんなが勇気と元気をもらえると言われました。岸良氏はやる気の問題にも興味をもち始めていたので、先に登壇されたあと、わたしの話を聞いてくださいました。ふたりとも終了したあとで、会場から名古屋駅まで行く途中で、短い時間ではあるけれども、タクシーのなかで、プロジェクト・マネジメントは一方では手法だけど、実は、ひとのやる気がいちばん大事なのだと熱弁されました。その熱弁のなかで、実は、CCPMの事例発表会をすると、感動して泣き出すひとがいるぐらい盛り上がるので、プロジェクトの話をマネジメントの方法としてよいものをつくるのとあわせて、人びとの感動を説明できるようになればと希望を吐露されました。

PPCMに興味がある金井ゼミMBA院生もいたので(たとえば、ソニーからいらっしゃっているひとは、ご自分がプロジェクト・マネジメントの方法を社内で教えるほど)、また、学部金井ゼミ卒業生で社長をしていて、モティベーションや理念に興味を抱くひともいるので、興味のある学部3年4年ゼミ生、一般院生にもお声かけをして、まったくボランティア講師として、岸良氏に来てもらうことにしました。手弁当で神戸大学にいらっしゃり、プロジェクト・マネジメントのなかの仕組みとともに人間問題を非常に快調かつ明快に、説明されました。わたしはわたしで、その世界とモティベーションやリーダーシップとのつながりを考えながら聞いていました。逆に、日本にTOC(制約理論、Theory of Constraint)を普及させる協会(日本TOC推進協議会)があり、その協会で岸良氏は理事なのだが、なんと神戸大学で協会の会合を臨時で開いてもらって、今度は、わたしがモティベーションの話をしました。岸良氏は、今は、『ザ・ゴール』や『ザ・チョイス』などベストセラーの著者で、TOCの提唱者で、かつ物理理学者のエリヤフ・ゴールドラット先生のパートナーとなり、世界中を飛び回っておられます。実に元気な方で、同じR&Bでもリズム&ブルースならぬリズム&ビジネスというハードロックバンドで、なんとレッド・ツェッペリンを歌っているリードボーカリストでもあります。そういう岸良氏と、プロジェクト・マネジメントのタスク面(システム面)とその人間的な面をつなげるために、ふたりでこの書籍を書くことにしました。奥様のきしらまゆこ先生がまたファンの多い絵本作家でいらっしゃるので、この書籍のために、いろんなキャラクターや絵を描いてくださり、冒頭には、心配性で悩む木掛(きがかり)係長という漫画の絵まで制作してくださいました。

経営学における組織行動論は心理学をベースに経営におけるひとの問題をとりあげてきたが、そのテーマは、モティベーションにしても、リーダーシップにしても、キャリアにしても、集団風土、組織文化にしても、ふわふわとしてとらえどころがありません(この分野の創設者のひとり、フリッツ・J・レスリスバーガー教授は、自叙伝を『ふわふわしたとらえどころのない現象』と名づけたほどです。だから、学部の学生には、制度に結晶した面を知るために、人事制度については人材マネジメント、管理の制度については管理会計の講義もとるように強く薦めています。

そんな日々のなかで、わたし自身が、プロジェクト・マネジメントというタスクも明確で、仕組みもシステムもあり、ツールも豊富な分野で、さらにIT産業ならITSSという形でスキルの標準まで存在するような世界で、モティベーション問題を岸良氏とともに考えることができたのは幸せでした。願わくば、まだ十分に統合がなっていないタスク(システム)要因と、ヒューマン要因とか、有機的につなげられた研究や実践がさらに進展することを、この書籍を通じて祈っています。

目次

Part1 過剰管理の生まれるところ
Part2 考察!ひととシステムが融合する「経営管理」
Part3 自然にみんながやる気になるマネジメントの方法
Part4 脱!過剰管理宣言

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