組織・経営から考える公共性 公共哲学18
著者名 | 金井壽宏 著(発題VII) 山脇直司 金泰昌 編 |
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タイトル | 組織・経営から考える公共性 公共哲学18 |
出版社 | 東京大学出版会 2006年5月 |
価格 | 4700円 税別 |
書評
公共哲学というテーマで東京大学出版会から、すでに18冊にもなるシリーズが発刊されています。そのなかに、「活私開公型のキャリア発達とリーダーシップ開発-個を活かし社会にも貢献する世代継承的夢」という論考を書かせていただきました。この出版物は、驚くべき博識の金泰昌先生の主催する公共哲学京都フォーラムでの発話とそのあとの議論をもとに編集されています。わたしは、公共哲学を専門にするものではありませんが、東京工業大学の今田高俊先生の勧めで、公共性とリーダーシップを関連づけて議論できないかというご依頼があり、第49回の京都フォーラムに招かれ、上記のテーマで発表をさせていただき、哲学者、歴史家、法学者、政治学者、社会学者など多彩な分野の皆さんと議論する機会をもたせていただきました。
滅私奉公でなく、わたしを殺さず、わたしを活かしつつ世にいいものを残していくひとたち、また、奉公という閉鎖的なイメージでなく、公に開け繋がるということがうまくできているひとたちが、ビジネスの世界でもいるのでしょう、それについて前向きな話をしてほしいというのがおおまかなリクエストでした。そこで、「わたしの夢」が「わたしたちの夢」となり、さらに「つぎの世代に継承すべきいいものを世に残す夢」という観点から、経営者だけでなく、音楽の世界で生きた3名の方々の簡単な生活史をもとに、世代継承的夢(generative dream)の実現という観点から、中年以降のリーダーシップを、中年の発達課題である世代継承性(generativity)との関連で記述した試論を発表いたしました。世代継承性とは、人生の半ばにして干上がって、元気をなくすのではなく、これまで以上に創造的に営みをつづけ、若いときよりもさらにスケールの大きい夢を描くので、その実現のためには、若いひとたちを巻き込み彼らを育てる必要があり、さらにその夢が実現すれば、結果として、つぎの世代に意味のあるものが残されることにかかわります。アメリカ経営学会がアトランタで開かれたので、マーティン・L.キング牧師の生家を、同僚の髙橋潔先生と、内田恭彦先生と訪ねてきましたが、1963年8月にキング牧師が、公民権運動のためのワシントン大行進のために、「わたしには夢がある」と連呼したとき、そこで語られた夢こそ、わたしがこの論考で描いた世代継承的夢の雛形です。
達成動機の研究で名高いハーバード大学の故デイビッド・マクレランドの高弟で、ノースウェスタン大学のダン・マッカダムズの中年の世代継承性の研究にかねてより注目しておりましたが、金先生や今田先生がマッカダムズの諸研究をご存知なばかりでなく、日本にも招聘され、世代継承性について議論され、それが米国でも書籍(Ed de St.Aubin, Dan P. McAdams, and Tae-Chang Kim eds. (2004). The Generative Society: Caring for Future Generations. Washinton, DC.: American Psychological Association)となって出ていることも、このときの議論を通じて知りました。滅私奉公ではなく活私奉公ということで発表しましたが、発表時に、京都フォーラムでは活私開公というアイデアを議論しているとお聞きし、論文に仕上げるときには、上記のテーマに落ち着きました。
スケールの大きいリーダーシップ、世代間の連携、中年の発達課題などに興味のある方は、ご覧ください。当日の議論もわたしの発話のあとに収録されています。なお、高価な学術書ですので、図書館等でみつけていただき、261-301ページをご覧ください。そこに、わたくしの発表論文と質疑のやりとりが掲載されております。
MBAの皆さんにも、どうか、スケールの大きな夢を。
目次
はじめに
発題I 公共経営の時代の公共性とは
発題II グローバリゼーション時代の公共性と国際NGOの役割
発題III 過労死・過労自殺と公共性
総合討論I
発題IV ビジネス倫理学と公共性
発題V 近代における組織と公共性
発題VI 組織の公共性
総合討論II
発題VII 活私開公型のキャリア発達とリーダーシップ開発
発題VIII 活私開公のエシックス
発展協議I
発展協議II
発題IX 企業の社会的責任と公共性
総合討論III
発題X 会計と公共性
総合討論IV
発展協議III
おわりに