はたらきたい。―ほぼ日の就職論


著者名 金井壽宏(183-208頁) 糸井重里 監修
タイトル はたらきたい。―ほぼ日の就職論
出版社 東京糸井重里事務所 2008年3月
価格 1300円 税別

書評

新刊についている帯をはずしてしまえば、この書籍の表紙にも、背表紙にも、糸井重里氏の名前はありません。この本の母体は、糸井氏の人気サイト、ほぼ日刊イトイ新聞に『「ほぼ日」の就職論』としてアップされました。そのウェブサイト・アドレスは、つぎのとおりです。
http://www.1101.com/job_study/index.html

就職ってたいへんだけど、なんとかこれを前向きに支援できないか、働くことはそんな憂鬱なことばかりではない、就活をするひとを元気づけたいという気持ちで、糸井氏が順繰りにインタビューをしてまわった記録から成り立っています。インタビューの相手は、採用面接や人事の専門家の河野晴樹氏、デザイナーとしてキリンビールに入り、漫画家として独立しているしりあがり寿氏、フリーのミュージシャンや、芸人として活躍する若手四人(板尾創路氏、ピエール瀧氏、天久聖一氏、浜野謙太氏)とのグループ・インタビュー、それに続いて、わたしとの対談「ユメとキボウの就職論」があり、なんと結びは、矢沢永吉氏と熱く語り合って、(書物では、さらに)糸井氏のあとがきが読むひとの心に余韻を残しています。メインテキストそのものは、サイトで見られるものと同じなので、まずは上記のサイトを訪ねてください。冊子になると持ち歩いたり、書き込んだり、ひとに見せたりできる。また、書籍にするにあたって、ほぼ日のアーカイブから、働くことにかかわる珠玉の言葉を100編選び、書籍のなかにちりばめています。

かつて『プレジデント』という雑誌でインタビューをしたときにも、糸井氏の暖かさ、ホスピタリティを感じました。前回はわたしが聞き手でしたが、今回は糸井氏のほうが聞き手で、わざわざわたしの話を聞くために、関西でお会いくださいました。人生やキャリアの節目では、不安や緊張もあるけれど、残りの半分は、ユメやキボウのはずで、しかも、一方で心配をして、他方で期待もするというのは、ひとが将来のことを展望するからに他なりません。自分も調査のためにインタビューをすることが多いのですが、同時にインタビューで取材されることもあります。ここに収録されている対話は、わたしにとっても、ありがたい機会でした。

就職活動やのちのちやってくる就職後の生活はつらいことばかりではありません。そういう元気づけを、糸井氏がなさっていること自体が興味深いです。なにしろ、糸井氏ご自身は、いつか働くことになると思うだけで泣いた経験がおありなのだから。それほど働くのがいやで、自分が働くイメージがわかなかった糸井氏が、今では30名を超すエンタープライズの経営者なのです。ご自分ひとりのクリエーティブだけでなく、他のひとと共に成し遂げる喜びをもっておられます。ほぼ日のウェブサイトと、この新刊の紹介を、そこに参加させていただいたご縁で、このeurekaでも紹介させていただきました。

目次

第0章 この本を手にしてくださったみなさんへ
第1章 面接試験の本当の対策。(河野晴樹×糸井重里)
第2章 目よ、泳げ。そして、カツカレーを得よ。(しりあがり寿×糸井重里)
第3章 THE GREAT FREE (板尾創路×ピエール瀧×天久聖一×浜野謙太)
第4章 ユメとキボウの就職論。(金井壽宏×糸井重里)
第5章 上がりたかったんだ。(矢沢永吉×糸井重里)