株式持合い解消のシグナリング・モデル
要約
本稿では、1990年代以降のわが国企業財務の顕著な特徴である株式持合いの解消をシグナリング・モデルのフレームワークで議論する。本稿のモデルでは、事業環境の悪化に直面した企業が、事業の再構築に必要な資金を調達するために持合い株式を売却する。株式持合いの解消は、持合い企業の事業環境が悪化したシグナルとなり株価は下落する。しかしながら、株式持合い解消によって得た資金を事業の再構築に投下することで、企業は長期的な収益を改善できる。株式持合いの解消は、一時的な株価の下落をもたらすが、長期的には株主にとって好ましい財務政策である。本来持合いを解消すべき企業が、一時的な株価下落を恐れて株式持合いを継続すると、長期的な株主価値を損なう結果になる。
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砂川伸幸 |
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