わが国株式市場における株式投資収益率の半年効果と4ファクター・モデル
要約
これまでの調査研究によれば、株価の変動には、週末効果( Cross [1973] 、 French [1980] 、 Rogalski [1984] )、休日効果( Ariel [1990] )、月内効果( Ariel [1987] )、1月効果( Rozeff and Kinney [1974] )などの周期性( seasonality )や暦年構造( calendar structure )が存在することが良く知られている。榊原・山﨑 [2004] は株式インデックスを用いて、わが国株式市場において、1月から6月までの暦年上半期に得られる株式収益率は7月から 12 月までの暦年下半期に得られる株式収益率を有意に上回ることを発見した。我々は、この現象を半年効果( Half-Year Effect )と呼んでおいた。
しかも榊原・山﨑 [2004] は、この半年効果は小型株及びバリュー株に顕著に見られることを発見した。他方でわが国株式市場でも、小型株は大型株よりも(榊原 [1983] 、加藤 [1990] )、またバリュー株はグロース株よりも( Chan 、 Hamao and Lakonishok [1991] )相対的に高い投資収益率が得られることが報告されている。従って、この半年効果は、小型株効果やバリュー株効果と独立して存在する効果であろうか、という疑問が生じうる。
Fama and French [1992 、 1993 、 1996] は、市場ベータの他に、企業規模(株式時価総額)と自己資本の簿価 / 時価比率(株価純資産倍率の逆数、 B/M )を加えた3つのファクターで株式投資収益率の銘柄間のクロスセクショナルな違いは説明可能であると主張し、新たな資産価格モデルとして3ファクター・モデルを提唱している。
本論文では、このファーマ=フレンチの3ファクター・モデルを使って、市場要因、規模要因、 B/M 要因を調整した後でも尚、半年効果が存在するかどうかの再検証を行う。さらに、この半年効果の存在が、わが国株式市場において、ファーマ=フレンチの3 ファクター・モデルの成立に対してどのような影響を与えるかを検証する。
本論文の構成は以下の通りである。まず第1節では、榊原・山﨑 [2004] で行った半年効果の検証を要約する。第2節では、東証1部上場の個別銘柄を対象にして、ファーマ=フレンチの3ファクター・モデルを用いて、半年効果は小型株効果やバリュー株効果と独立して存在することを明らかにすると共に、我々の4ファクター・モデルを提案する。第3節では、半年効果の存在によって、ファーマ=フレンチの3ファクター・モデルにはカレンダー・ストラクチャーが見られることを検証する。第4節で全体のまとめを行う。
本論文の構成は以下の通りである。まず第1節では、榊原・山﨑 [2004] で行った半年効果の検証を要約する。第2節では、東証1部上場の個別銘柄を対象にして、ファーマ=フレンチの3ファクター・モデルを用いて、半年効果は小型株効果やバリュー株効果と独立して存在することを明らかにすると共に、我々の4ファクター・モデルを提案する。第3節では、半年効果の存在によって、ファーマ=フレンチの3ファクター・モデルにはカレンダー・ストラクチャーが見られることを検証する。第4節で全体のまとめを行う。
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榊原茂樹
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