上場変更企業におけるManagers Opportunismの検証 裁量的会計発生高とPost-Listing Return

要約

岡田/山崎[2005]では米国の上場変更企業がPost-Listing Negative Driftを示すのに対し、日本ではPost-Listing Positive Driftが発生している事実を指摘した。しかし、Managers Opportunismが日本市場で発生していないと断言する証拠としては充分ではない。そこで本稿では、会計学の領域で扱われる裁量的会計発生高の概念を援用し、それを時系列で観察することで日本の上場変更企業経営者にManagers Opportunismがあるか否かを検証することにした。その結果、経営者は上場変更前から利益増加型の利益調整を行い、上場変更以後も利益増加型の利益調整を継続していることが明らかとなった。また上場変更前後の多くの年で、規模、簿価・時価比率、上場変更直近の裁量的会計発生高の3つの基準で選択したコントロールファームと比較しても有意な利益増加型の利益調整を行っている証拠が発見された。更に、裁量的会計発生高と超過リターンの関係について調査してみた結果、 Post-Listing Returnおいても有意にコントロールファームを上回ることが確認された。米国とは対称的なPost-Listing Positive Driftを示す背景には、上場変更企業経営者の継続的な利益調整行動が関係している可能性が高い。

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岡田克彦

山崎尚志

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