低費用航空会社の垂直型製品差別化モデルの一般化と 米国複占市場データを用いた実証分析

要約

本稿はレガシーキャリアと呼ばれる、ハブアンドスポークシステムを展開する大手航空会社と、低費用航空会社の垂直的差別化行動モデルを一般化した上で、米国の国内線データを用いてモデルの現実との整合性を検証している。

理論モデルは低費用航空会社がノーフリル・サービス化を進めながらクールノー競争を展開すると仮定している。クールノー均衡輸送量と価格を用いた比較静学によると、垂直的的差別化が進めば進むほどレガシーキャリアと低費用航空会社の棲み分けが進み、市場輸送量の減少と市場価格の上昇が証明されている。一方垂直的差別化が不十分な場合には互いに競合しあい、その場合には市場輸送量が増加することと価格が低下することが証明された。この理論モデルから計量経済モデルを導出し、同次方程式の価格関数と需要関数の誘導型モデルを ILS推定した結果、実際には垂直的差別化が不十分であることにより、レガシーキャリアと低費用航空会社は競合関係にあることが判明した。結果として、低費用航空会社の参入により、輸送量の増加と価格の低下が計測されている。

キーワード：垂直的製品差別化、同次方程式、低費用競争