震災から再建に導いたリーダーシップの研究 -神戸洋菓子産業の事例より-
要約
本研究の目的は、神戸の製菓業者の阪神・淡路大地震からの復興プロセスをリーダーシップの観点から考察することにある。調査の結果、リーダーシップに関して、1)事業システムの再構築、2)インフラとしての人的ネットワーク、3)倫理的リーダーシップという3つの特徴を指摘することができる。
地震という予測不可能な天変地異による損害や激しい経営環境の変化は、組織の存続に危機をもたらすものである。しかし、神戸製菓業の経営者たちは、そのような危機に対して事業システムを再構築する好機と捉えて積極的に組織変革を推進し、震災からの復興と経営環境への適応を果たしたのである。
また、リーダーシップの発揮を下支えする存在として明らかになったのが、同業種、異業種を問わず形成された人的ネットワークである。従来、リーダーシップの典型的な形は、組織内のリーダーとフォロワーという組織内に閉じた、縦の関係にあったが、神戸洋菓子事業者の事例においては、経営者同士の連携という組織の境界をこえた、横の関係が重要な役割を果たしていたのである。
さらに、本研究の特色として倫理的リーダーシップをあげることができる。経営者は、倫理的リーダーシップの発揮を通じ、震災復興時期に社員であるフォロワーに製菓業を営む本質は顧客への奉仕の精神であることを、身をもって実践した。これによりフォロワーは仕事に取り組むことの意義を認識し、仕事に取り組むことやりがいを感じてモチベーションが向上し、組織の生産性向上につながったのである。
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西尾久美子 小野善生 |
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