中小小売業における事業継承意識に関する日韓比較調査
要約
東アジア諸国は、地理的歴史的背景が異なるものの、同質の東アジア文化圏に属していることを想定し、「東アジアにおいて、家族と小売商業との間には類似した密接な関係がある」という仮説をもって我々は東アジアを対象に家族と商業との関係についての普遍性を探ってきた。この仮説を検証すべく、我々研究グループは「夫婦間の分業」、「世代間の親子分業」、そして「小売商業集積への取り組み」という3つの領域を中心に研究を進めてきた。我々は高室・石井(2005)の仮説を受け、東アジアにおける家族と商業との基礎的関係を調査分析する第一歩として、世代間事業継承関係における日韓分析を試みる。世代間事業継承関係について質問調査票を分析する際に、本稿は以下のような構成を取ることになる。つぎの第2節では日韓の商店経営者を対象におこなった質問調査票の概要を提示する。続いて、3節では世代間事業継承を比較分析するに当たって、日韓商業集積の標本における商店経営者の人口統計的特性および商店特性に関する特徴を把握する。第4節では小売商店の後継者の有無、後継者候補について比較する。第5節では本稿の主な課題でもある日韓の商店経営者における事業継承意識、職業意識、家族規範意識を順に比較分析する。両国の商店経営者間の事業継承意識の全体的傾向を把握したうえで、商店経営者の年齢、性別、業種をコントロールし、両国間の事業継承に関連する意識を比較分析する。最後に第6節では本稿の結びとして、本稿で行われた日韓両国における世代間事業継承意識に関する比較分析を通じてえた結果をまとめるとともに、本稿の限界と課題について簡略に示す。
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柳到亨 石井淳蔵 高室裕史 横山斉理 |
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