日本における株式持合が税負担削減行動に与える影響
要約
本研究の目的は、日本型経営の特徴である企業間の株式持合と経営者の税負担削減行動との関連性を実証的に分析することである。複数にわたる税負担削減行動の尺度を用い、株式持合の程度を表す変数として2社間で相互に株式を保有していることを条件として計測される株式持合比率を用いて実証分析を展開した。そして、その他の要因をコントロールした上で、株式持合比率と経営者の税負担削減行動の間に逆U字形の関係があることを析出した。すなわち、株式持合比率が上昇するにつれて、はじめは経営者の税負担削減行動が有意に抑制される。しかし、その程度は逓減的であり、いずれの税負担削減行動の尺度を用いるかによって若干異なるが、持合比率がおよそ22%から30%の水準を超えると、今度は、株式持合比率の上昇に伴って、経営者の税負担削減行動がより積極的になる。このことは、ある一定水準の株式持合が経営者の裁量的行動を抑制する効果を発揮していることを示すものである。本研究は、株式所有構造が経営者の税負担削減行動に与える影響を理解する上で貴重な証拠を提示しており、特に、株式の相互持合が経営者の税務行動に及ぼす影響を明らかにした最初の研究である。
<キーワード>
株式持合、経営者の税負担削減行動、実効税率、会計利益と課税所得の差異
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山下裕企 |
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