戦略的パートナーとしての日本の人事部―その役割の本質と課題―

要約

本論文の目的は,日本企業の人事部がいかなる意味で経営の戦略的パートナーとなりうるのかを,日本型人事管理の進化型の予測のもとに,アメリカにおける人事部の役割改革の議論と対比させながら,神戸大学と日本能率協会が2009年に共同で行った質問票調査のデータを用いて理論的・実証的に検討することにある。結果は,1)管理職は「役割主義のインセンティブ制度―人事権の運用部分の人事部集中―人事部による粘着情報の収集蓄積」の結合した進化J型(管理職バージョン)が機能的である。2)非管理職は「役割主義のインセンティブ制度―事中の人事権である運用の人事部集中,ただし事前の人事権である基準設定と事後の昇進昇格はライン分権―人事部による粘着情報の収集蓄積」の結合した進化J型(非管理職バージョン)が機能的であることが分かった。以上から,日本企業の人事部の戦略的パートナーとしての役割は,事前の戦略策定と事後的な創発戦略の創出に関与し,その展開を構想し,戦略達成に必要な役割を想定し,その役割を達成しうる人材の要件を見出し,適材を発掘・選抜・配置・育成することであると主張される。

Key Words:
  人事権  双対原理  進化J型  人事情報の費用  役割主義

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平野光俊

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