日本企業の低炭素型サプライチェーンの現状分析―質問票調査の集計結果―

要約

地球環境問題の深刻さを克服するため,近年の環境保全活動は,個別企業での対策から,サプライチェーンでの対策に重点を移しつつある。企業単体でのCO2排出量にとどまらず,サプライチェーン単位でのCO2排出量削減や低炭素化へ向けた活動をいかにマネジメントするかは,これからの企業経営において大きな問題となっている。このような状況の下で,サプライチェーンにおけるCO2排出量削減や低炭素化に向けた取り組みの現状を調査し,実践上の課題を認識することは,今後の取り組みを促す上で重要である。このような問題意識から,環境省環境研究総合推進費研究プロジェクト「アジアを含む低炭素型サプライチェーンの構築と制度化に関する研究」では,東証一部上場の製造業を対象に,サプライチェーンの低炭素化に関する質問票調査を実施した。質問票調査は,2011年11月-12月の期間に東証一部上場の全製造企業 (821社)の環境保全担当部門と購買担当部門の双方を対象として,郵送質問票調査として実施された。購買担当部門を対象とした調査の回収率は約24%,環境保全担当部門を対象とした調査の回収率は約23%であることから,サプライチェーンの低炭素化に対する産業界の関心が高いことが改めて裏付けられた。
本報告書では,調査の第1次集計の結果明らかになった主要な発見事実を要約した上で,実践的インプリケーションについて検討している。第2節は,本調査から明らかになった主要な発見事実の要約である。第3節では,調査結果をふまえた上で,今後,低炭素型サプライチェーンを実現する上での実践上のインプリケーションを,個別企業レベルの対応と政策レベルの対応に分けて検討した。第2節および第3節を通じて,調査結果のエッセンスを理解できるようになっている。
なお,文末の付録として,購買担当部門調査(付録1)および環境保全担当部門調査(付録2)の詳細な集計結果を掲載している。大部分の設問について,全業種と業種別に分けて集計結果を掲載した上で,主要な発見事実を中心にコメントを付している。調査結果の詳細に関心のある読者は,付録を参照されたい。

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梶原武久

國部克彦

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