「人材マネジメントの新展開」調査報告書
要約
グローバリゼーションやICT・AI等の技術革新,米国型の市場主義の日本企業への浸透に伴い,日本企業の人事システムは大きな変更を余儀なくされている。こうした変化を促進する諸要因を基礎とする,今日的動向の根源となる考え方は「グローバル市場主義」という用語で総称される。
従前の日本的経営をベースとした人事システム(日本型人事)は,このグローバル市場主義の進展に伴い,具体的にどこがどのように変更されているであろうか。我々は,(一社)日本能率協会のご協力を頂きながら,日本国内の従業員数100名以上の同会会員企業を中心とする上場企業2,500社,および外資系企業500社の計3,000社の人事部長を対象として,2017年5~8月にかけ質問票を郵送し,郵送による回答もしくは同会のウェブサイト上の回答画面への回答の入力を依頼する形で実態調査を行なった。有効回答は134社,回収率は4.5%であった。
グローバル市場主義の進展に伴い,日本企業の新しい人事システムは,より一層の市場対応が可能となる体制へ変貌を遂げつつある。但し,完全に米国型の市場主義を模倣するのではなく,むしろ旧来の日本型人事システム(家族主義的な組織文化,労使双方のニーズの合致志向,人事部による従業員の人事情報の長期的な蓄積と運用,低職位層の意思決定への起案書作成段階における限定的参画,グローバルリーダーの内部育成志向)は基盤に置きつつ,そのうえで透明性・納得性の高い実力主義に基づいた評価・報酬付与が行なわれる人事システムが模索されている。昨今の「働き方改革」においても,こうした日本企業の新動向を踏まえつつ,従業員のやりがい感と経営成果の両立を志向した施策を展開することが,今後ますます求められるであろう。
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江夏幾多郎 余合淳 島田善道 浅井希和子 |
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