探索的データ解析に基づく世界企業の付加価値分配

2019・28

要約

経済格差の広がりは世界的な問題である。企業会計は付加価値をステークホルダーへ分配するための重要な制度であるにもかかわらず、それぞれのステークホルダーへの分配額が明示されない構造になっており、会計制度が不平等を固定化し強化する傾向を有している。このような企業会計の限界を明らかにするために、まず、世界の全上場企業の財務ビッグデータを抽出後、前処理し、データ解析環境に読み込んだ。次に、そのデータを要約・可視化することによって、探索的に解析し、世界の企業の付加価値分配の傾向的な動きや地域ごとの特徴などを明らかにした。その結果、ヨーロッパ諸国は労働者への分配が比較的安定しているが、アメリカやアジア諸国では、相対的に資本に対する分配が高く、増加傾向にあり、経済格差が強化される傾向が示された。このような企業会計の問題を克服する対処の一つとして、個別企業レベルの付加価値情報を明示するように会計制度を改善する必要がある。

著者 PDFへのリンク

阪智香

國部克彦

地道正行

Download(1864KB)