組織内の実践共同体のマネジメント

2024・01

要約

本研究は、企業組織内における非公式組織、特に実践共同体が組織的成果をどのように生み出し、その成果を公式組織がどのように活用するために必要なマネジメント手法を探求するものである。実践共同体は、メンバーの学習促進やスキル向上の場として認識されてきたが、それが公式組織との関係性の中でどのようなプロセスを経て成果を創出するに至るかは明らかになってこなかった。本研究はこれらの非公式組織が公式組織とどのように相互作用し、組織的価値を生み出すかを明らかにする。

本研究では、インタビューデータに基づき、M-GTAによるプロセス分析を採用し、15社18の実践共同体に属する22名のリーダーから収集したデータを分析した。この分析により、非公式な実践共同体が公式組織内での成果を生み出すには、公式組織との意味交渉を通じた実践が必要である事がわかった。そして、その実践は公式組織からの物質的、機会的によって促進されることがわかった。物質的支援は実践共同体における学習を促進し、機会的支援は組織人としてのアイデンティティを強化する効果を持つ。公式組織はこの二つの支援を適切なタイミングで実施することで、実践共同体の自発性を損なうことなくその成果を引き出すことができる。

本研究は、非公式組織のマネジメントに関する新しい視点を提供し、実践共同体が組織内で果たすべき役割とその潜在的な価値を再評価することを促す。また、実践共同体の活動を適切にサポートし、その成果を公式組織の利益に結びつけるための具体的な示唆を提供している。今後は公式組織側からもデータを取ること、また、このモデルの現場活用を通じた実際的な評価が求められる。

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今井 悠資

鈴木 竜太

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