監査人の交代と監査報酬に関する実証研究

2024・02

要約

監査人の交代が⽣じると、新しい監査人は追加的なエフォートが必要になるため、監査時間が増え、それに伴い監査報酬も増加する可能性がある。しかし、監査人の交代に伴って常に監査報酬の増額が求められるのであれば、監査⼈の交代は起こりづらくなる。そのため、監査人は、交代に伴い自身が負担した追加的なエフォートをクライアントに請求する報酬に転嫁するとは限らない。また、監査人が交代する理由には法制度等による強制的なものと自発的なものがあるし、そのレベルも監査事務所、パートナー、チームメンバーがあり、それぞれの交代について、監査報酬の増加を伴うか否かは自明ではない。本稿では、公表データを⽤いて、パートナーの交代と監査報酬との関係を中⼼に、監査事務所の変更と報酬との関係も分析した。パートナーの交代は、筆頭とその他という立場の違い、法令等によって求められる強制的な交代か自発的なものであるかによって、4通りに属性を分けて分析した。さらに、監査報酬についてはその⽔準と変化の両方を用いた。
本稿の分析結果は、筆頭ではないパートナーの交代または自発的な交代の際に監査報酬の⽔準と変化に影響を及ぼすことを示していた。また、本稿の分析期間には、監査チームメンバーの長期関与に関する要求事項が強化されているが、それが監査人の交代と監査報酬の関係に影響を及ぼしたことを示唆する結果は得られなかった。

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髙田 知実

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