神戸大学大学院経営学研究科は、1902年創立の旧制神戸高等商業学校を母体とする神戸大学経営学部に付設されるものとして1953年に修士課程と博士課程を持つ研究科として誕生しました。これは経営学系の大学院としてわが国最初のものであり、国立大学としては博士課程までを設けた唯一の大学院でした。経営学・会計学専攻と商学専攻の2つの専攻を持ち、経営学、会計学、商学の全分野にわたってわが国の研究者を育成する拠点として誕生したのです。
以来、経営学研究科は、わが国の優れた研究者を数多く輩出し、経営学博士と商学博士の学位を授与してきました。特に、経営学博士については、長い間、わが国でそれを授与できる唯一の教育機関でした。経営学研究科が輩出した研究者は、わが国における経営学、会計学、商学の発展に中心的な役割を果たし、輝かしい歴史を築いてきました。
21世紀を迎えようとする頃、わが国の大学教育は、それまでの学部教育を基本とする仕組みから、大学院教育を基本とする仕組みに転換が図られました。この転換は、大学院大学化と呼ばれました。制度の上では、それまで経営学部に経営学研究科が付設されていたものを、逆に経営学研究科に経営学部を付設する形にしたものです。この大学院大学化は、単なる組織上の変更ではありません。それは、今後の日本社会がますます専門的で高度な知識を持つ人材を必要とするようになるという考えに基づいたものです。
神戸大学経営学部局の大学院大学化は1998年に始まり1999年に完成しました。これは、経営学・商学系の分野ではわが国最初の大学院大学化です。21世紀に必要とされる大学院教育においても、経営学研究科はわが国の拠点として位置づけられたのです。大学院大学化は大学院教育の高度化と多様化に対応しようとするものですから、それに合った教育プログラムが不可欠です。そのために、経営学研究科は、その大学院大学化に先立って1995年に、1953年の大学院設置以来行われてきた博士課程教育プログラムを大幅に改革しました。この改革によって、経営学研究科はマネジメント・システム専攻・経営学総合分析専攻・企業システム専攻・日本企業経営専攻の新たな4専攻体制に移行すると同時に、博士後期課程においてもMBA修了者など社会人大学院生も積極的に受け入れ、研究者育成と高度専門職業育成を両輪として相乗的な教育研究を展開することになりました。
2012年4月からは、大学のグローバル競争への直面という問題、転換期にある日本企業および産業社会のニーズへの柔軟な対応の要請、および個別に改善を積み重ねてきた教育体系の整備の必要性などを背景として、従来の4専攻を「経営学専攻」の1専攻に一元化しました。この改組によって、専門分野を横断的に学びやすくなったことから、産業社会のニーズに柔軟に対応でき、かつより時代の要請に合致したグローバルに活躍できる次世代研究者を育成するとともに、日本産業の国際競争力を高めることに寄与できるものと考えています。このように、不断に改良し続けられている経営学研究科の博士課程教育プログラムは、今日わが国で行われている経営学、会計学、商学の博士課程教育プログラムとして、わが国でも最も優れた最先端のプログラムの1つであると自負しています。