ハッピー社員-仕事の世界の幸福論
著者名 | 金井壽宏 |
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タイトル | ハッピー社員-仕事の世界の幸福論 |
出版社 | プレジデント社 2004年10月 |
価格 | 952円 税別 |
書評
経営や経済関係の雑誌は多い。『プレジデント』といえば、創刊以後ながらく、文字通り社長になるひと、なっているひと向けの雑誌だった。高級な(紙の質もいい)雑誌で、なぜか戦国武将が表紙になることが多かった。わたくしも若いときに、たとえば、中根千枝先生のタテ社会論の経営学への意味合いについて書いたこともあったが、そこに書かせていただくと借りてきた猫みたいな感じの時期があった。
しかし、時代が変わり、元気で若い藤原昭広さんが編集長になって、ここ数年『プレジデント』がずいぶん様変わりした。戦国武将の変わりに、たとえばイチローが表紙となり、自己鍛錬がテーマとなったりするようになった。事実をベースに経済記事を載せる雑誌とは一線を画して、働くひとの心理学をベースにした議論の場としてこの雑誌を育てていくようになったようだ。読者層も、 50 代、 60 代の社長というより、 20 代、 30 代の人たちを主たるターゲットに、働く意味を考えてもらう記事が増えた。わたしは、今年の 5 月まで 40 代だったので、自然と 40 代の中年を念頭においた論考をたくさん書かせてもらったが。
そんな中で、組織行動論の立場から、上司のリーダーシップ、部下のフォロワーシップ、自己実現や出世の捉え方、キャリア発達とリーダーシップ開発の観点からみた中年のすごし方などについて、気が付けばかなりの本数のエッセーを<新生>『プレジデント』に掲載してもらってきた。そして、その<新生>雑誌もまた蓄積を重ねて、そこから書籍が生まれるようになった。それが、 President Books で、その1冊として、ここ 4 年間の間にわたしが『プレジデント』にかかわった論文と対談から成り立つ本書ができあがった。これまでの掲載分を束ねるともう一冊になるぐらいになっていると気づいてくださった編集担当の中嶋愛さんのおかげで、この書籍が実現した。初出は巻末に記載されているとおりだが、この機会に、大幅に加筆修正をさせていただいた(また、中嶋さんに、重複部分を調整していただいた)。
対談は自分ひとりでは当然のことながらなし得ないことで、そのときどきに、いつも学ぶことが多かった。雑誌に一度きり載ったままでは惜しいとも思っていた。だから、それらがばらばらでなく、一冊のなかに再録されたことが便利でもあり、うれしくもある。それをご許可いただいた対談のお相手の方々にも、大きな感謝。比較文化・精神病理学の野田正彰先生、スポーツ記者の田村修一さん、リクルートから教育界に転じられた藤原和博さん、元気のかたまりのような糸井重里さん、それぞれ執筆と実践において人事のエクスパートである江坂彰先生、日本 GE の八木洋介さん、『踊る大捜査線』のプロデュースをなさった亀山千広さんとの対談を、このような形で、より読みやすく集約されたことも、たいへんにありがたい。
ペアの装丁で同時出版となる河合薫さんの『部長のハート』とともにいっしょに手にしてほしい。こちらの書籍では、自己実現、キャリア・アンカー、夢の力などがストレス対処との関連で語られ、何よりもアーロン・アントノフスキーの理論によって、より健康に生きるということを考えるヒントに満ちている。『ハッピー社員』も『部長のハート』もともに、心配・不安よりは希望・夢、憂鬱よりは元気、無気力でなく楽観を希求するポジティブ心理学の世界的な動きに歩調をあわせる出版となっていることをうれしく思う。
少しでも、仕事の世界がやるせなさの元になるのでなく、元気や幸福の元になることを、探し直すきっかけになればと思う。
目次
第1章 今どきの出世の幸福論
第2章 頼れるリーダーの幸福論
第3章 部下と上司の幸福論
第4章 飽きずに働くことの幸福論
第5章 彷徨える中年の幸福論
第6章 「踊る」組織の幸福論
著者名 | 河合薫 |
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タイトル | 部長のハート |
出版社 | プレジデント社 2004年10月 |
価格 | 952円 税別 |