ソニー 復活の経営学
著者名 | 長田貴仁 |
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タイトル | ソニー 復活の経営学 |
出版社 | 東洋経済新報社 2006年7月 |
価格 | 1600円 税別 |
書評
筆者が井深大氏と盛田昭夫氏という二人の偉大な創業者に初めてお会いしたのは、1980年代前半、ニューヨークでジャーナリストとして働いていた頃だ。 20代後半の若輩だった。だが、井深氏と盛田氏に対する印象は、一言に尽きる。リベラルである。対等の目線で話しかけていただいた。「優れた経営者」である前に「いい人だな」と思った。筆者が、今よりもはるかに純粋であったがゆえに、そのように感じたのかもしれないが、ソニーOBを含めて井深氏、盛田氏を知る世代の人たちは、同じような感想を口にする。
「歳下だから、という理由だけで横柄な態度はとられなかった」
ソニーだけでなく、ほとんどの企業で創業者は別格である。だが、ソニーにおいては、井深氏と盛田氏は、まぶしすぎるほどの存在だった。井深氏と盛田氏が持つ一種のオーラが、社員のモチベーションを究極まで高めたからこそ、「焼け跡派ベンチャー」として誕生したソニーは急成長する。
だが、その偉大なる創業者はソニーにいない。2006年5月7日、同社は「還暦」を迎えた。二人の創業者と多かれ少なかれ関わり、トップを務めた大賀典雄氏、出井伸之氏も退任した。
2005年6月にソニーの会長兼CEOに就任したハワード・ストリンガーというイギリス人経営者は、本社がある日本ではなくアメリカにいる。日本企業としては、これまで無かったケースだ。同社は、2006年3月末時点で、外国人持ち株比率が50.1%とはじめて過半数を超えた。まったく新しいステージに突入しようとしている。終戦後、ソニーのグローバル経営は、輸出に始まり、現地法人設立、現地でのダイレクト・セールス、現地生産へと進化した。そして現在、既存の新日本型経営を超える「グローバル新日本型経営」に挑戦している。それが成功したとき、ソニーは本当に復活したと言えるだろう。
今、ソニー社内では「もう、昔話をするのは止めよう」と語られていると聞く。だが、この本では、敢えて昔話を入れた。歴史の検証なくして、未来は語れないと考えたからだ。本書は、経営史の視点から、同社の経営戦略を分析したケーススタディである。
目次
プロローグ 「焼け跡派ベンチャー」の経営史的意義
第一章 還暦ソニーの原点
第二章 成長企業の情熱と行動力
第三章 全盛期の技術経営
第四章 第二世代の浮沈
第五章 「新日本型経営」の行方
エピローグ 経営者にこそ徹底した成果主義を