株式持合と会計利益の質の実証的関連性
要約
本研究の目的は、日本企業における株式の相互持合と会計利益の質との関連性を実証的に調査することである。利益の質に関する定義は研究によって様々であり、その測定指標も多岐にわたる。そこで、我々は、先行研究で用いられてきた代表的な指標、および利益の質の指標となりうると判断した指標の合計10指標を取り上げ、利益の質として計測した。これらの指標は、(1)会計発生高の質、(2)予測可能性および持続性、(3)平準化の程度、(4)収益と費用の対応、(5)株価関連性、(6)適時性および保守性という側面から利益の特性を把握したものである。主要な分析結果は、持合比率と利益の質の間には統計的に有意な関連性が観察されるが、その関係は必ずしも線形ではなく非線形の関係として考えられること、しかし利益の質は一義的に定まっておらず、どの様な観点から測定するのかによって、持合比率との関連性が異なることを示唆している。本研究の結果は、日本企業の特徴的な株式所有構造である株式の相互持合と会計利益の質の実証的な関連性を明らかにしている点において非常に興味深いものである。
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