会計利益と課税所得の差額情報による将来業績の予測能力
要約
本稿の目的は、財務会計上の税引前利益と課税所得との差額情報(book-tax difference: BTD)による将来業績の予測能力について分析することにある。本稿は先行研究を拡張し、以下の3点について分析を行う。第1に、異常会計発生高を考慮したうえでも、BTDが利益の持続性の低下について追加的な説明力を有するかについて分析する。第2に、BTDが利益の持続性についての含意を有する場合に、市場がそれを当期の株価形成に織り込んでいるのかを検証する。第3に、BTDと将来の株式リターンとの関連性を分析する。分析の結果、本稿では以下のような発見事項を得た。第1に、異常会計発生高を考慮してもなお、大きな正または負のBTDは税引前利益および会計発生高の持続性の低さを説明する。第2に、BTDが大きな企業はそうでない企業と比較して、利益反応係数および会計発生高の反応係数が小さい。第3に、BTDは決算日の3ヵ月後から12ヶ月間の株式リターンと負の関連性を有する。そして第4に、課税所得の申告制度による課税所得の実績値を用いて計算したBTDを用いた場合には、上記の結果がよりいっそう顕著に観察される。
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池田健一 金光明雄 |
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